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実行力 / 橋下 徹(その3)

2020/12/13
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ビジョンがあっても実行プランがなければ何も動かない

組織を動かして実行するには、実行プラン(工程表)が必要です。
ところが、世のコンサルタントや学者の中には、実行プランのことは全く考えず「ビジョンだ」「戦略だ」と言っている人がたくさんいます。
コンサルタントが役所や企業に戦略を提言しても、ほとんど役に立たないのは実行プランが全く考えられていないためです。

イギリスのEU離脱問題は、実行プランが考えられていないまま国民投票にかけて離脱が決まってしまいました。
その後に離脱に向けての実行プランを作り始めたら問題点が噴出し、国会の議決が得られずに大混乱を招いています。

僕は東日本大地震の後、原発ゼロを目指すことを主張しました。すると、朝日や毎日新聞は「早くやれ」と言い出しました。
早くやれと言われても、ゼロにするまでの実行プランが必要です。

そもそも国のエネルギー政策のことなので、政権を取って、官僚を動かして、実行プランを作らせるというプロセスが必要です。
そのことを言っても朝日・毎日は「今すぐゼロにしろ」としか言わない、実行プロセスなど考えていないのです。

チーム作りに置ける「失敗の本質」

チーム作りでの典型的な失敗例は、各部局から人を出してもらってプロジェクト・チームを作って「はい終わり」というもの。
これでは、何も動きません。

人を集めたら、その中で決定権者、権限者を決めておかねばなりません。
そうしないと、メンバーがそれぞれの部局の立場からの意見を言い合って、話がまとまらずに終わってしまうというパターンに陥ります。

「意見がまとまらなかったときは、最後はこの人の決定に従う」ということを決めておくことが必要不可欠です。
チーム内の上下関係を構築するのがリーダーの重要な仕事の1つです。

特に、同等の立場の者が集まったチームでは、チーム内で自主的に指揮命令系統や上下関係を構築することは非常に困難です。
改革プロジェクトチームと称して人を集めて、権限も何も決めず、みんな横並び。そんなチームは全くダメな「実行できない」チームです。

比較優位の思考

「トップはどのような思考回路で部下の提案を判断しているか」についてお話しします。
僕は常々部下に「案を出すときは3つだしてほしい」と言っていました。
最善と考える案、その対局の案、2つ中間の案、の3つです。

1つの案だけでメリット・デメリットを説明されても、その優位性がわかりません。
3つの案を比較して説明してくれれば、判断しやすくなります。
僕が案を検討するときに重視したのは「比較優位」という考え方、簡単に言うと「一番ましな案を選ぶ」ということです。

新しいことや改革を実行しようとすると、問題点ばかり挙げる人がいます。
しかし、現状に大きな問題点があるから変えようとしているわけであり、現状と新しいことの両者を比較して「ましな方を選ぶ」「ましな方の問題点には目をつぶる」と言う思考が大事です。

100%完璧な選択肢など通常はありません。
日本の議論にはこうした「比較優位」の思考が足りないと痛切に感じます。

築地市場の豊洲移転問題

メディアでは豊洲の様々な問題点が指摘されました。
しかし、元の築地市場にも山のように問題点があったはずです。
だからこそ豊洲移転案が出てきたわけです。

豊洲移転問題の報道では、2つを比較して「どちらがましなのか」と比較検討する思考が足りなかったと思います。
メディアは築地と比較してどうなのか、という伝え方をすべきでした。
「築地より豊洲がまし」であれば、豊洲のデメリットには目をつぶるという思考が必要です。
そうでなければ新しいことなど始められません。

豊洲の地下水からベンゼンが出たとメディアは大騒ぎしましたが、その水は飲料水にするものではありません。
法律上の飲料水の基準は満たしていませんが、下水の基準は満たしています。
法律上の安全基準を満たしていれば問題ないのです。完璧さを求め出したらキリがありません。

さらに、築地の地下水は不純物ゼロなのか、その点は全く議論されませんでした。
「豊洲は通路が狭い」など豊洲の使い勝手の悪さが報道される一方で、築地の使い勝手の悪さは報道されない。
こういうことをしているから、比較優位の判断ができないのです。

「比較優位」で考えられないと「ダメ出し人間」で終わってしまう

日本の教育では、比較優位の思考が考えられていないため、新しい案、1つの案の問題点だけをあげつらい批判するという、偏った議論があちこちで見られます。

複数の案がはっきりと示されていれば、比較優位の思考をしやすいのですが、問題は新しい案が1つだけ出されたときです。
確かに案は1つであっても、それは現状に対する案なのですから、新しい案についてのみ問題点を検証するのではなく、あくまでも現状との対比で、どちらの方が優位か、どちらの方がよりましか、という判断をすべきなのです。

よくメリット・デメリットを比較せよ、と言われますが、それは一案についてのメリット・デメリットを比較するのではなく、新しい案と現状、ないしは複数あんのメリット・デメリットを比較し、優位な方を選択すべきなのです。

「理屈では負けているが、やりたい」というとき

どう考えても僕の案より部下の言っていることの方が理屈にかなっているときは、理屈で負けていることを素直に認めたうえで部下に「お願い」しました。

「理屈ではみなさんの言っていることの方が理に適っていると思います。だけど、これは選挙に出たときからの僕の思いとして、どうしてもやりたいと思っていることなので、何とかお願いします」と伝えたのです。

このようなお願いで全ての組織が納得してくれたわけではありませんが「しょうがないですね。それは知事(市長)に任せます」という感じで僕の案を実行してくれたことも多かったのです。
こちらが理屈で負けているのに、感情的になって「いいからやれ!」「上司の言うことを聞け!」と怒鳴っても組織は動きません。

リーダーは自分で決めて指示を出すことはできます。
しかし、現場が納得してくれなければ、いくら指示を出しても物事は円滑に動きません。

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