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実行力 / 橋下 徹(その4)

2020/12/17
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一斉メールで考えを浸透させる

僕の考え方、思考方法を組織に知ってもらうために一斉メールを活用しました。
業務の指示だけでなく、ニュースを読んだときの意見や感想もメールに書いて、15名以上いる大阪府庁の幹部全員に送っていました。僕の思考方法を知ってもらうためです。

幹部に送ったメールは部下たちへの転送、また転送で、組織の中に広く伝わっていきました。
ある仕事について担当部局の幹部に指示を出すときにも、他の部局の全幹部をCCに入れて一斉メールで知らせました。
僕がどんな指示を出すのか、指示を受ける幹部以外にも知ってもらうためです。

もう1つの理由は、特定の人物の情報の独占が変な形で力の源泉になってしまう状態を変えたかったからです。
組織にいると「この情報は私だけが持っている」ということが大きな力になります。
政治の世界はその最たるものです。

特定の誰かにだけ自分の考え方や方針を伝えると、その人が組織内で力を持ってしまいます。
知事からの指示が本当にあるかどうかに関わらず、周囲はその人のいうことを聞かざるをえなくなります。

特定の人が組織内政治力を発揮できないように、一斉メールで情報を共有する形にしたのです。
そもそも「情報を知っていること」と「業務遂行能力」は別物です。
業務遂行能力以外のおかしな政治力を行使できないようにするには、巨大組織であればあるほど方法をフラット化することが必要でした。

メールで現場の情報を吸い上げる

一斉メールの活用は、組織が知事である僕の意向を過度に忖度するという弊害も生みかねません。
そこで、反対意見も出る環境を整えるため、僕はメールを使って情報収拾もしていました。
全職員にメールで「何かあったら直接連絡ください」と伝えると、徐々に職員から直接メールが来るようになりました。

幹部や中間管理職は、自分をすっ飛ばして意見が届くため嫌がっていましたが、この仕組みにより幹部が「知事、これはこうなっています」と行ってきたときに「本当はこうなんじゃないですか?」と、かなり詳しい現場情報をもとに幹部と議論できるようになりました。
幹部は現場の状況をごまかすことも、言い訳することもできなくなり「下手なことはできない」と組織に緊張感が生まれました。

情報が共有されないことのリスク

地方自治体は、減債基金という地方債の返済金を毎年積み立てを行っています。
大阪府は減債基金を毎年500億円ずつ取り崩して予算の赤字分に充てていて、その総額は5200億円にも上っていました。
幹部たちに尋ねてみると、なんと、ほとんどの幹部は報道があるまでその事実を知らなかったのです。
どの部局も財政が火の車だということを知らずに、自分たちに必要な予算を要求していたのです。
もっと言えば、メディアを含めて大阪府民全体が知らなかったのです。

まず僕は府庁組織メンバーの全員に大阪府の財政情報を共有してもらい、どの事業の予算が本当に必要なのか見直しをしてもらうことにしました。
さらに財政非常事態宣言を発して、府民全員にも共有してもらいました。
そして、最終的には、年1100億円の収支改善を達成することができました。

会社でも、財務状況について幹部たちが知らないことは多いのではないでしょうか。
営業担当と財務担当が完全い切り分けられている会社では、営業担当の役員が「えっ、うちの会社の財務はそんなに悪かったの?」とビックリするということが起こります。
本来は営業部門にも事業部門にも財務情報を伝えて、共有してもらう必要があります。
重要な情報は幹部全員、いや組織全員に共有してもらうことが大切なのです。

「まずい情報」を早くあげさせる

僕は組織に対して「まずい情報こそ先にあげてほしい」と常に言っていました。
まずい情報は誰もが隠したがりますが、まずい情報こそ重要です。
危機管理上最悪なのは、まずい情報を隠して、あとでバレてしまったときです。
バレた場合には、もうどうにも言い訳、釈明をすることができません。
嘘を重ね、それがバレて失脚、というのは一番恥ずかしい。

まずい情報は隠さずに早くあげてもらい、上司への報告ないしは速やかに公表することが必要です。
早い段階で対応すれば、一時的には批判を受けますが、あとで発覚するよりもはるかにダメージが少なくてすみます。

積極的に公表していったにも関わらず、危機的状況が拡大してしまったならば、そのときは身を引くという覚悟がリーダーには必要です。
まずい情報を隠して自分の立場を守ろうとするのがリーダー・トップとしての最悪の態度です。
そしてここでの注意点は、まずい情報があがってきたときに、リーダーが「現場で対応しろ」と言ってはならないことです。

そんなことを言ってしまったら、現場から二度と情報は上がってこなくなります。

「こちらで対応は引き受けるから、ともかくまずい情報はあげて欲しい」と部下や現場に周知徹底しておく必要があります。
まずい情報は後悔して、それでも事態を乗りきれなかったら仕方がないと覚悟する。これがリーダーに必要な意識です。

民主主義の本流

朝日・毎日新聞をはじめとするメディアやインテリたちは、僕ら大阪維新の会が行った「選挙を通じて議員議席や知事・市長権力を獲得していく運動」を毛嫌いします。
政党を作って知事・市長のポジションにあるだけ、悪魔のような権力者だという扱いをしてきます。

その一方で「住民の力で政治を動かそう」と主張し、デモを応援します。
原発問題でも沖縄問題でも、とにかくデモをしている人を報道し「こんなにデモをやっているのに政策を見直さないのはおかしい」「若者がデモを起こして素晴らしい!」と拍手喝采を送ります。
僕もデモは否定しませんが、民主主義の本流は選挙を通じて多数の議席を獲ったり、権力を獲ったりして、世の中を変えていくことだと思います。

たとえ数万人のデモでも、それで国の方針が決定されるとすれば、その方が非民主主義ではないでしょうか。
1億2千万人の人口のうちわずか1万分の1くらいの人数のデモで、日本の方針が決まったら民主主義とは言えません。
デモはあくまでも選挙を通じた民主主義を補完するものであり、デモを大事にするのであれば、それを同じくらい選挙を通じて世の中を変えようとする運動も大事にしなければならないと思います。

メディアは僕のことを「選挙至上主義」などと批判しましたが、世の中を変えるために政治を動かすには選挙で議席を獲るしかありません。
デモで政治を動かそうとするより、選挙で政治を動かそうとする方が、はるかに民主的だといいうのが僕の持論です。

大阪都構想の住民投票までに至る過程において「橋下は独裁だ、横暴だ」と批判を受けてきましたが、僕は民主主義の正道の実行プロセスを歩んできたを自負しています。

道州制

現在の日本の行政・役所の仕組みは、中央政府と地方自治体の役割分担が適切ではありません。
待機児童対策は、本来は地方自治体が担当するべきであり、保育所行政の権限も財源もすべて地方に渡し、保育所の設置・運営ルールも地方で決めさせるべきです。

地方に責任を負わせる代わりに実務を行うための権限とお金のすべてを与える、それが国家運営のマネジメントというものです。
ところが今は、中央政府が保育行政に関する決定的な権限や財源も持ち、実務的な細かなルールもすべて決めています。

森友学園の土地問題も、安倍政権の対応は不誠実だったとは思いますが、所詮は私立小学校の敷地をめぐる値引きにすぎません。
役所の不正や不適切な行為は正さねばなりませんが、森友問題が議論される場は、本来は国会ではなく地方議会であるべきです。
あのような問題で国会を停滞させるべきではありません。

「道州制」とは、かれこれ40年以上インテリたちの間で議論され続けている「国と地方の役所組織の役割分担を整理して、国がやらなくてもいいことは地方に移し、国は国本来の仕事に集中する」「47都道府県だと力が弱く国を頼ってしまうので、9〜13の同州にまとめ直し、内政問題は同州が担当する」というものです。

リーダシップは組織に規定される

国際社会の中で、日本の指導者がトランプ、習近平、プーチンらと渡り合うためには、地方できることは地方でやり、国は外交や安全保障などに集中できる環境を整えるべきです。

実は、国のトップがこれほど国会に拘束される国には、日本以外にありません。
その理由は、中央政府があらゆる仕事を抱え込み、それらすべてが国会で議論されるからです。

「リーダシップは組織に規定される」というのが僕の持論です。
仮に習近平やプーチンが日本の首相になっても、あれほどのリーダーシップは執れないでしょう。
彼らは、中国やロシアの政治行政組織だからこそのリーダーシップなのです。

もちろん民主主義においては彼らのようなリーダーは不適切・有害ですので、中国やロシアの政治行政組織を採用するわけには行きませんが、大阪都構想や道州制は、国や地方のリーダーが適切なリーダーシップを発揮できる組織体制にするものです。

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